認知症の運転者が事故を起こしたら自動車保険は使えるか
認知症の方が運転してしまい事故を起こしてしまった場合でも、他人への賠償責任を補償する「対人賠償」と「対物賠償」は、基本的に補償対象になります。
ただし、その運転者に責任能力がないと判断された場合に限り、少し難しい話となるため注意が必要です。
運転者に責任がないとなると、その運転者の同居している家族が監督義務者として賠償責任が生じることが考えられます。
でも、運転していた車がその家のものであれば、特に問題なく補償されます。
なぜならば、対人&対物賠償保険の被保険者は下記のとおりとなっており、
これらの関係の人に賠償責任が生じる場合は補償対象となるからです。
つまり、運転者ではなく同居親族に賠償責任が生じても大丈夫なのです。
※対人&対物賠償の被保険者(話を分かりやすくするために一部省略しています)
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者またはその配偶者の同居親族
- 記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
- 記名被保険者の承諾を得て契約車両を使用または管理中の者
ですが、賠償責任が生じる人が、この被保険者の範囲に入らない場合もあります。
例えば、こういうケース。
Aさんが友人Bさんの車(記名被保険者もBさん)を借りて運転。
事故を起こしてしまったが、運転者Aさんは認知症だったため責任能力なしと判断された。
友人Bさんが、Aさんが認知症であることを知っていて貸していた場合、友人Bさんに賠償責任が生じてしまう可能性があります。でも、Bさんは被保険者の範囲に入っているため補償対象となります。
でも、Aさんが認知症であることを知らずに貸していた場合、Aさんの監督義務者となる同居親族に賠償責任が生じることが考えられます。
すると、Aさんの同居親族は被保険者の範囲には入らないため、対人&対物賠償保険の補償対象外となってしまうのです。
ただ、保険約款上、このような穴が生じてしまっているのですが、保険会社としては被害者救済の観点から賠償責任保険は補償対象としたいところです。
すでに東京海上を中心にいくつかの会社では、2018年1月1日以降を始期日とする契約に関して約款変更を行って、この穴をふさいでいます。他の保険会社もこの動きに追随するかとは思いますが、それまでは前述のような補償の穴があることには注意する必要があります。
参考:【業界初】認知症等の責任無能力者の監督義務者を、自動車保険の補償の対象へ
自分方への補償は
次に「人身傷害保険」や「車両保険」など、自分方への補償は保険会社によって現時点では対応が違うようです。
というのも、保険会社によって、約款上の「保険金を支払わない場合」の項目に、「被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって生じた損害」と書かれている場合があるからです。
また、上記文言が書かれていなかったとしても、故意もしくは重大な過失があった場合は補償しないと書かれています。
ほとんどないとは思うのですが、保険会社によっては、認知症の症状の重さによって、「その状態で運転したら事故するに決まってるだろう。つまり重大な過失だ」ということで対象外とする可能性も考えられます。
よって、補償されるかどうかはケースバイケースだと考えておきましょう。
まとめ
認知症の方が運転して事故をおこした場合、一部の例外を除いて、他人への賠償金をカバーする対人・対物賠償は使うことができます。
しかし、自分の車に乗っていた人の死傷(人身傷害や自損事故保険等)や契約車両の損害に対する保険(車両保険)は使えない可能性があります。
わざわざ言うまでもありませんが、認知症の方の事故リスクはひじょうに高くなります。よって、家族の方は認知症の方には絶対に車を運転させないようにしてください。
本人を説得して免許証を返納させるとか、家族の見ていない隙に運転されないように車の鍵を隠すとか、可能であれば車を手放してしまう等の対策を打つ必要があるでしょう。
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最終更新日:2018年9月4日