車両保険とは
車両保険は自動車事故や、飛来物、火災、爆発、台風、洪水、落下物、盗難などにより、
契約車両に損害が生じた場合、所有者に対して、その損害額を保険金額内で補償するものです。
<目次>1.車両保険の種類2.全損と分損の支払い保険金について3.保険金を受け取れるのは所有者4.盗難自動車が見つかったら5.保険金を支払われない場合6.車両保険に付帯できる特約
車両保険の種類
車両保険には基本的に2つの種類があり、契約時にどちらを付帯するかを選択できます。
(保険会社によっては、これ以外の種類を付帯できるところもあります)
一般条件
地震・噴火・津波などを除いた、ほぼすべての車両損害をカバーする車両保険です。
保険会社によって、「一般車両保険」などと呼ぶところもあります。
車対車+A
一般条件から、「当て逃げ」「単独事故」「人や自転車との事故」の場合の補償を除いた車両保険で、補償範囲が狭くなる分、保険料も安くなります。
保険会社によって、「エコノミー+A」「車対車+限定A」などと呼ぶところもあります。
⇒鹿などの動物とぶつかったことによる車両損害。「車対車+A」でも補償されるか
全損と分損の支払い保険金について
車両の損害は2つに分類され、保険金の計算方法がそれぞれ違います。
全損とは
- 修理不能なほどに大きな損害を被った状態
- 修理はできるが、その費用が車両保険金額を上回る場合
- 車が盗難されてしまった場合
契約時に設定した車両保険金額全額が支払われます。
分損とは
- 車の修理費が車両保険金額内である場合
修理費の金額から免責金額を差し引いた額が支払われます。
当然ですが、事故直前の状態に戻すために必要な修理の費用だけです。
例えば、ついでに1年前にこすったボディーの傷を直したとしても、それは対象外です。
また修理に伴って取り外したパーツが、値がつくような価値のあるものだった場合、その分は減額されます。
搬送費用も補償される
全損でも分損でも、事故により自力走行ができない場合には、
修理工場等までの搬送費用も車両保険から補償されます。
(一部保険会社では対象外となる場合もあります)
支払い金額の上限は、車両保険金額の10%、もしくは10万円の高いほうとなりますので、
車両保険金額が200万円の場合は20万円を上限、
車両保険金額が50万円だった場合は、10万円を上限に搬送費用が支払われるのです。
つまり、ロードサービスが付帯されなかったとしても、車両保険を付帯してあれば、
事故による自走不能の場合の搬送費用は補償されますし、
ロードサービスの無料搬送距離を超えて費用が発生してしまっても、
車両保険によって、超過部分をカバーすることが可能なのです。
保険金を受け取れるのは所有者
事故などにより自分の車が損害が生じた場合、車両保険を使用することができますが、
その保険金を受け取れるのは、「車両所有者」です。
車を修理する場合は、保険会社から修理工場へ修理代を直接支払うのが一般的なので、
トラブルにはならないとは思いますが、全損するなどして修理をしない場合、
契約時に所有者名義を正しく設定していないと、
トラブルになる可能性がありますので注意しましょう。
盗難自動車が見つかったら
契約車両が盗難されてしまった場合、車両保険を付帯していれば補償を受けることができますが、保険金が支払われた時点で、契約車両は保険会社の所有物となります。
でも、その後に盗難車が見つかった場合、それが保険金支払日から60日以内であれば、
受け取った保険金を返金することで、契約車両を返してもらうこともできます。(約款上は60日としていますが、実際にはそれ以上たっても可能であれば返すこともあるようです)
盗まれた車をまた返してもらうなんて、気持ち悪いでしょうから、
そのまま受け取った保険金で違う車を購入する人が多いようですけどね。
もし、保険金を返金し、契約車両が返還される場合、盗難されて発見されるまでの間に車両損害があれば、それに対してあらためて車両保険を使うことも可能です。
保険金を支払わない場合
契約車両に損害があれば何でも車両保険で補償されるわけではありません。
状況によっては車両保険の補償対象外になることもあります。
ここでは保険金が支払われない場合をいくつか紹介しておきます。
次のいずれかに該当する者の「故意」または「重大な過失」
- 保険契約者、被保険者または保険金を受け取るべき者(注1)
- 所有権留保条項付売買契約に基づく契約車両の買主、または1年以上を期間とする貸借契約に基づく契約車両の借主(注1)
- 1および2に定める者の法定代理人
- 1および2に定める者の業務に従事中の使用人
- 1および2に定める者の父母、配偶者または子。ただし、被保険者または保険金を受け取るべき者に保険金を取得させる目的であった場合に限ります
「故意」というのは分かると思いますが、分かりにくいのが「重大な過失」ですね。
単なる「過失」ではなく「重大な」となっているのがポイントです。
重大な過失とはこういったことを指します。
- 少し注意すれば予見できたのにそれを怠ったもの。
- ほとんど故意と言えるような著しく注意が欠如した状態。
具体的には、このような状況が「重大な過失」となり得ます。
- 酒を飲んで泥酔状態で運転して壁に衝突した。
- 無免許運転をして電信柱に激突した。
- 交差点に故意に速度100キロで進入。曲がろうとしたが曲がりきれずに信号機に衝突。
どれも事故が起きることが安易に予見できるようなものですし、
3番目の交差点の例は、ほとんど故意とも言えるようなものですよね。
こういった事故の場合、車両保険の補償対象外となるのです。
戦争、革命、内乱、武装反乱、暴動など
あまり日本ではないかと思いますが、こういった暴力的な争いにより、
車が壊されてしまっても車両保険は使えません。
以前、中国の反日運動で多くの日本車が破壊されてしまっていましたが、
あのような状況での車両損害は対象外となってしまうのです。
地震もしくは噴火またはこれらによる津波
これら3つの大きな天災の場合は補償対象外です。東日本大地震による津波で、
多くの車が流されてしまっていましたが、残念ながら補償対象外であったのです。
ただし一部保険会社では、これらの天災による被害でも補償対象とする
「車両地震特約(保険会社によって名称は異なります)」がありますので、
それを付帯することで、この部分の補償をカバーすることはできます。
放射能汚染
これも東日本大地震の際の福島原発の事故が思い起こされますが、原発周辺に取り残された車両は放射能汚染されてしまっていますが、残念ながら車両保険の対象外となっているのです。
国や公共団体による差し押さえや没収
税金滞納や自己破産などにより契約車両を差し押さえされたとしても車両保険は使えません。
それはそうですよね。差し押さえられたのにその分の金銭を保険会社から受け取れたとしたらおかしいですね。
消防または避難に必要な処置による損害
例えば、狭い道路に契約車両駐車して運転手はその場を離れていて、
そこを火災現場に向かう消防車が通ろうとしたが通れなかったので、契約車両を強制的に移動させた。
その移動の際に車両損害を被ったとしても補償対象外ということです。
詐欺または横領
詐欺により契約車両を騙し取られたり、自分の経営する法人の名義の契約車両を、社員に勝手に名義変更されたうえで逃げられてしまったとしても、車両保険を使うことはできません。
以前、この件で取引先の方に車両保険を使えるのか相談を受けたことがあります。その方の友人が、自動車修理業者をやっているという人に、修理のために自分の車を預けたところ、すぐにそのまま車ごと失踪。実は修理業者というのは嘘で、どうも車をだまし取られたようでした。
一瞬、私は「盗難されたわけだから補償されますよ.....」と言いかけましたが、これは詐欺行為。なので、残念ながら補償対象外だったんですね。
契約車両に存在する欠陥。摩滅、腐食、サビなどの自然消耗
販売された時から元々存在していた欠陥は補償対象外です。
この部分はメーカーがリコールして直すべきところですね。
自然消耗ももちろん車両保険を使えるわけがありませんね。
もし、古くなってサビてきたから、そこを綺麗にしたいというような理由で
車両保険が使えたら、保険会社はやってられませんよね。
故障損害
駐車場から車を動かさそうとしたら、故障で車が動かない......
これは車両保険の対象ではありません。事故や盗難などでないといけません。
タイヤのみに損害が生じた場合
単にパンクしただけでは車両保険は使えないということです。
もちろん、他人のいたずらによりパンクさせられた場合も同様です。
ただし、あくまでもタイヤだけの損害だった場合のことです。
他の部分まで損害が及んでいた場合はタイヤも補償されます。
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車両保険の対象外となる主な状況は以上です。
この他にも補償されない場合はいくつかあり、保険会社によっても少し違っています。
気になる方は契約中の保険会社の約款等をチェックしてみてくださいね。
車両保険のページに「保険金を支払わない場合」という項目があるはずです。
車両保険に付帯できる特約
扱っている保険会社は限られているものもありますが、
下記の特約を車両保険にプラスすることで、車両損害に関する補償をグレードアップさせることが可能です。
このページでは、いくつかを簡単に紹介しますが、
詳細を知りたい方は特約名にリンクがはってありますので、それぞれの詳細ページを参照してください。
車の中に持ち込んだ「身の回り品」が自動車事故で損害を被った場合に補償されるものです。
自動車事故で契約車両が損害を被り、修理に出している間の代車費用を補償するものです。
契約車両が大きな損害を被ってしまった場合に、修理代や時価額相当ではなく、
新車購入額相当の金額を補償してくれる特約です。
車両保険では通常は補償対象となっている、「地震」「噴火」「津波」による損害も補償対象とするものです。
自分に過失がないのに車両保険を使った場合に関しては、等級が下がらないようにするものです。
最終更新日:2018年12月8日