暴力団の組員でも自動車保険の契約はできるのか
各社の約款を見てみると、「契約者や被保険者等が、暴力団員などの反社会的勢力に該当する人だと分かった時点で契約を解除できる」と書いてあります。
でも、契約時に反社会的勢力の人かどうかを確認したうえで、該当する場合は契約を断るという保険会社は少ないようです。
そのため、暴力団関係者のような反社会的勢力の人でも、自動車保険の契約をすることはできます。
つまり、多くの保険会社では契約時に確認はしないので、反社会的勢力と判明せずに契約できてしまうこともあるわけですが、契約後に判明次第、契約を解除するというスタンスを取っているのです。
で、気になるのは、事故の時に反社会的勢力の人だと判明した場合に、その事故の補償をするのかというところ。
各社の約款を見てみると、「対人賠償保険」や「対物賠償保険」、車両所有者が反社会的勢力でなかった場合は「車両保険」など、反社会的勢力でない人の被害に対しての補償だけはできるようにしている保険会社が多いようです。
万が一、暴力団員との事故の被害者になってしまった場合でも、相手が任意保険に入ってさえいれば、その補償はしてもらえるということです。
参考
実は2013年11月に日本損害保険協会が、反社会的勢力の損害保険契約を排除する方針を打ち出した後、1年足らずで自動車保険に限り、その方針を撤回した経緯があります。
ちなみに、排除方針発表時に日本損害保険協会から、「反社会的勢力への対応に関する保険約款の規定例」が発行されて、各社はそれを参考に暴力団排除条項を盛り込んで対応することにしたわけですが、当時の内容を要約するとこんな感じでした。
- 暴力団関係者は契約できません。
- もし、契約後に暴力団関係者だと分かったら、その時点で契約は解除します。
- 事故後に暴力団関係者だと分かっても補償はしません。
- 事故後に暴力団関係者だと分かった場合、暴力団関係者以外の被害者がいる場合は、その被害に対しての補償はします。
でも、この方針を続けると、暴力団関係者は任意保険に加入できないため、そういった人が加害事故を起こした場合、被害者は自賠責保険の補償しか受けられないのです。
ちょっとしたケガであれば、それで十分足りますが、死亡もしくは後遺障害を負ってしまった場合は、多くの場合、自賠責保険の補償だけでは足りません。
<自賠責保険の補償>・死亡・・・・・最高3000万円・後遺障害・・・最高4000万円・傷害・・・・・最高120万円
しかも、暴力団相手にそれ以上の賠償金を払ってもらうなんてことは、かなり難しいかと思います。(相手が普通の人でも高額な賠償金を回収するのは難しいとは思いますが。。)
当然ながら、各所からこの方針には批判的な意見が続出。1年足らずで自動車保険に限って方針を撤回するに至ったわけです。(火災保険等、その他の損害保険は契約不可)
現在、「反社会的勢力への対応に関する保険約款の規定例」は改定されており、契約できない旨の文言は消されています。各社はこれを参考に約款に取り入れ、契約時のチェックは特にしておらず、、反社会的勢力と判明しだい解除するという形で運営しているところが多いようです。
反社会的勢力と判明した時点で、契約を解除するわけですから、一切契約できないというのと大差はないような気もするのですが、とりあえず判明するまでは契約できますし、一般の被害者の補償もされるわけで、それだけでも意味があるのかもしれませんね。
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最終更新日:2019年1月19日