沖縄県の自動車保険は今も安いのか
沖縄県の自動車保険は安いという話を聞いたことありませんか。
沖縄県で使用する車の保険は「沖縄料率」と呼ばれる料率が適用されるので、本土に比べて保険料がかなり安いというものです。
たしかに以前はかなり安かったと聞いています。でも、今も本当に安いままなのでしょうか。調べてみましたので紹介したいと思います。
<目次>
沖縄県の自賠責保険は安い
自賠責の保険料は下表のとおり、「離島以外の地域(沖縄県を除く)」「離島」「沖縄本島」「沖縄離島」の4つの地域ごとに設定されています。任意保険とは違い、車種や免許の色などで保険料が変わることはありません。
ご覧のとおり、「沖縄」と「離島」の保険料はかなり安くなっています。「離島以外の地域(沖縄県を除く)」と比べて半分以下ですから、かなり大きな差です。
保険料というのは、基本的には過去のデータを基に設定されます。つまり、これだけ保険料に差があるということは、おそらく事故の数や保険金支払額が少ないんだろうと思いますよね。
そこでデータを探してみたところ、損害保険料率算出機構のサイト内の「自賠責保険統計」の資料の中に都道府県別統計表がありました。
さっそくデータをチェックしてみたのですが驚きました。
沖縄県の純保険料(保険料のうち保険金支払に割り当てる部分)が、「3,439,403千円」に対して、保険金支払が「5,404,978千円」で大赤字なのです。(離島も同様でした)
たまたまこの年だけということも考えられますので、2011年度までさかのぼってチェックしてみましたが、すべての年度で純保険料よりも保険金支払額が大幅に上回っていました。
つまり、事故率や保険金支払額は、沖縄県の保険料が安い理由ではないということなのです。
なぜ沖縄の保険料は安いのか
沖縄料率が低水準である理由について調べてみましたが、
残念ながら、はっきりとしたことは分かりませんでした。
某保険会社に問い合わせてみても、このようなはっきりしない回答。
弊社では損害保険料率算出機構が算出している「参考純率」を基にして保険料を決めています。この設定は保険料や支払保険金の実績に基づいて決められています。沖縄の保険料が安い理由としては、本土に比べリスクが低いこと、走行範囲が島内と限られていることなどが考えられます。
要するに「損害保険料率算出機構が決めているから、理由は分からない。
たぶん、リスクが低いからじゃないか」って回答ですね。
でも、前述のとおり、自賠責は保険料に対する保険金支払額の割合が多い状況が続いています。
さらに事故率等のデータを見ても、沖縄県だけがダントツで低いわけではありません。
よって、リスクが低いから保険料が安いとは言えないわけです。
となると、他に理由として考えられるのはこのあたりでしょうか。
(本来の保険の考え方とは違うのですが・・・)
- 鉄道がなく、車への依存度が高い
- 人口1人あたりの所得が都道府県別で一番低い
- 歴史的な経緯等への配慮
沖縄にはモノレールが一部区域で走っているだけで、
他に鉄道がないため、必然的に生活するうえで車への依存度が高くなります。
さらに人口1人あたりの所得が低いという状況があります。
(離島にも同じことが言えると思います)
つまり、生活をするうえで車の必要性が高く、所得が低い地域なので、
強制加入の自賠責保険の負担は軽くしてあげよう・・という配慮なのではないでしょうか。
また、沖縄は戦後アメリカに統治され、
1972年(昭和47年)5月15日に返還されたという歴史があり、
今も米軍の基地が多く存在しています。
「沖縄料率」は返還と同時に新設されていますので、
そういった歴史的な経緯に配慮した面もあるのかもしれません。
あくまでもこれは推測ですが・・・
NHK料金も沖縄県は安い
ちなみに自賠責保険ほどではありませんが、沖縄はNHK料金も安いようです。
ネット上で探してみると、「何故、沖縄県のNHK受信料は安いのか」)という記事があり、
そちらにNHKからの回答が紹介されていました。
沖縄県のNHK受信料がなぜ他の46都道府県よりも若干低く抑えられているのか。
NHKに説明を求めると概ね次の二点が理由である、とのこと。
@「無料放送局であったOHKからNHKへ到った特殊な経緯」
A「沖縄県民の県民所得が47都道府県で最も低い」
※OHKというのは、アメリカ統治地代にあった沖縄放送協会のこと。
「歴史的な経緯」と「県民所得」を沖縄のNHK料金が安い理由としてあげていますね。
これを見ると、やはり「沖縄料率」が安いのも、
同様の理由である可能性が高いのではないかと思います。
任意保険も沖縄は安いのか
沖縄は任意保険も必ず安くなるかと言えば、そうではありません。
保険会社によって、以下の3パターンに分かれており、
「沖縄料率」の適用が受けられないケースもあるのです。
- 沖縄料率が適用される
- 主な使用地で保険料が変わる
- 地域による保険料差はない
1.沖縄料率が適用される
代理店型の自動車保険では、
「東京海上日動」「損保ジャパン日本興亜」「三井住友海上」など、
通販方自動車保険では「そんぽ24」が、自賠責と同様に沖縄料率を適用されます。
そこで、「三井住友海上」「東京海上日動」「そんぽ24」で、
適当な内容で見積もりしたところ、このような結果となりました。
(補償内容は同一ではありません)
※三井住友海上沖縄県以外:95520円 ⇒ 沖縄県:72360円※東京海上日動沖縄県以外:99690円 ⇒ 沖縄県:73750円※そんぽ24沖縄県以外:57640円 ⇒ 沖縄県:44650円
自賠責ほどの差は出ませんでしたが、だいたい25%程度も安くなりました。
これはかなり大きいですね。
代理店型の保険会社は通販型に比べて、保険料が高くなることが多いのですが、
沖縄料率が適用されれば、通販型よりも安くなる可能性も高くなります。
また、通販型で唯一「そんぽ24」は沖縄料率の適用がありますので、
沖縄の人が保険料を安くしたい場合はいいかもしれませんね。
2.主な使用地で保険料が変わる
「イーデザイン損保」や「セゾン自動車(おとなの自動車保険)」などのように、
契約車両を主に使用する都道府県によって、保険料が変わる保険会社もあります。
参考までに「おとなの自動車保険」で見積もりした結果がこちらです。
(車種:プリウスで新規契約で適当な内容で見積もりました)
<イーデザイン損保>
- 沖縄県:42820円
- 佐賀県:42820円
- 鳥取県:47110円
- 香川県:44220円
- 大阪府:47110円
- 愛知県:45340円
- 東京都:43360円
- 岩手県:39780円
- 北海道:44180円
<おとなの自動車保険>
- 沖縄県:42490円
- 佐賀県:42490円
- 鳥取県:44370円
- 香川県:46120円
- 大阪府:44370円
- 愛知県:42820円
- 東京都:41270円
- 岩手県:39540円
- 北海道:41060円
特に沖縄県が安いということはありませんでした。
使用する地域で保険料が変わる保険会社では、
沖縄だけが特別安くなるということはないようですね。
ちなみに、上記以外に他の県もいくつか見積もりしてみたのですが、どうやら、「北海道」「東北」「関東・甲信越」「北陸・東海」「近畿・中国」「四国」「九州・沖縄」の7区分で保険料を分けているようです。沖縄は鹿児島や佐賀と同じ保険料になりました。
3.地域による保険料差はない
ソニー損保など、車を使用する地域が保険料に影響しない保険会社もあります。
当然、地域が影響しないので、沖縄で使う車であっても割引されることはありません。
ということで任意保険は、
どの保険会社でも「沖縄料率」が適用されて安くなるわけではありません。
沖縄で車を使用する方は、沖縄料率が適用される代理店型の保険会社や、
通販型の「そんぽ24」で、まずは見積もりしてみるといいでしょう。
ただ、任意保険の保険料が決まる要素は多岐に渡ります。
よって、「沖縄料率」がある保険会社で見積もりしたとしても、
沖縄県で使用する車の保険料が必ず安くなるとは言えません。
できるだけ保険料を安くしたい場合は、
沖縄料率がない通販型自動車保険の見積もりもしたほうが良いと思います。
沖縄の大同火災では2015年に大幅値上げ
大同火災は沖縄県のみに拠点を置いて営業している損保会社。
沖縄の自動車保険契約は、同社に集中している状態のようで、
もちろん「沖縄料率」が適用されています。
その大同火災が2015年に平均10%ほどの大幅な保険料の値上げをしました。
値上げの理由は、損害保険料率算出機構が、
損害保険各社へ提供する「参考純率」を見直したことによるもの。
図表のとおり、ここ数年で保険金支払額が大きく増加しているので、
損害率と保険料のバランスが是正するために、「参考純率」の水準を上げたのです。
当然、これを機に「沖縄料率」を採用している保険会社も値上げしています。
でも、この値上げがされても、「沖縄料率」は「本土料率」に比べて、かなり低い水準のまま。
上記の見積結果のとおり、まだ本土よりも約20%以上は保険料が安い状況です。
ただ、今後さらに保険金支払額の増加していくと、
本土の水準と大差がなくなる可能性は十分考えられるでしょう。
公開日:2018年2月27日
最終更新日:2020年12月15日